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小話

久方ぶりに小説が打ちたいな~と思ってたんたんと打ちましたが、最近はビジネス書と資産運用の本とファッション雑誌しか読んでなかったので、まぁまぁ小説書き始めた人くらいのクオリティだなっていう広い心で読みたい人は読んでみてね。
誤字脱字はまぁまぁ許してクレメンス

―――

明け方は寒く、昼間は暑い。なんとも度し難いような春陽気。
西新宿と東新宿の中間、埼京線、中央線が通る線路沿い、大きなパチンコ屋を目印にしてちょっと奥まったところに表向きの事務所がある。
看板はなく、表向きとしてはペーパーカンパニーとして存在する『何でも屋 クラウド』。四階建てのビルで、一階が受付けん事務所。二階は水煙草専門店、三階はゲイバー、四階はバーの事務所になっている。
いちおう店自体はいつでもオープンはしている。が、客が来ても来なくてもどっちでもいい風という感じだ。
猫探しの依頼から不倫、浮気の証拠探し、お部屋の掃除などなど、なんでも請け負っている。
基本的には青ことKKであるオレが日がな一日スマフォいじりつつ、ながらテレビかけつつ、煙草を吸って、適当にパソコンで本業のチェックをしているという、そういう形。
たまぁに誰かが依頼しに来るんだがね。まぁそういう人間っていうのはグレーゾーンの人間か、かわい子ちゃんか、こちら側の人間なのだけれど。稀に普通のお客もやってきたりする。

Trrrrrrrrr….Trrrrrrrrrrrrr…

着信音は…、事務所のスマフォではなくて本業のガラケーだった。
もちろん、ガラケーの方に掛けてくるやつは三人いるが、基本的に昼間かけてくるのは一人だけ。つまり、

「緑か」
『そーですよー。陽が高い時間のお電話なんてボクちゃんだけでしょ』
「まぁ、そうだな。…んで?仕事か」
『そうなんですよねー!学園周りの清掃、お願いしていいですかね?』
「あいよ、分かった」
『まぁキミの交友関係にどーのこーの言いわないけどさ。実費でお願いしね~』

通話を斬りながらブラインドを閉めて電気を消す。とりあえず胸の内にある12+1発と、残りは現地調達でいいかな、と。
事務所を出て鍵を閉めて、とりあえず都庁方面へと向かうことにする。

――― さあ、ヒーローになれる時間だ。

*****

時間は惜しいので、事務所の横に置いておいたロードバイクで移動する。正午になる前に片づけなきゃまずい。
とりあえず状況を見るために都庁方面へ急いで向かい、そのまま中へ。
丁度よさげなところに警備員がいないかな、と探しつつ、平日の昼間なので人はマチマチ。観光客団体がちょうど上にあがるところだったのでタイミング的にはラッキーだ。
ポケットから小銭ケースを取り出して、わざとらしくもこぼしつつ、一番よさげな500円玉を警備員の足元へ放り投げる。我ながらジャックポット素晴らしい。

「おや、外人さんですかな?」
「そうなんですよ、ちょうど観光に来てて。ついでに自販機とトイレの場所を伺っても?トイレが先の方がいいです」

などと誘導しつつ、人の目線が外れたところでボッキリ首を曲げてあげる。そのまま男子トイレに押し込んで警備服を拝借。
ちょっと胸囲と股下がキツいものの我慢我慢。
とりあえず、上の階に行って、学園が見張らせる部屋を当たらなければならない。
降りてきたエレベーターに乗り込んで、途中から階段の方がいいだろうか。ひとまず43~48階を目指す。ここの階は一般人は立ち入りできない階となっているが、44階だけトイレが使用可能だから44階はないだろう。
43階からしらみつぶしに行くしかない。学校が見える方角、ジャストヒットの部屋は決まっている。問題はそれが何階か、というだけだ。
時刻はもうすぐ11時を過ぎようとしている。なんとか昼前までには終わらせなければ。昼休みは好きが多くなる、危ない。
今なら授業中だ。生徒が大勢いる前で、非現実的(射殺)な殺しは目立つからな。
運が良けりゃ人が捌ける夕方まで待ってくれるだろうが、オレは待ちたくないのでさっさと終わらせてもらうぜ。

「ボンジュール?ご機嫌いかがかな。オレはしこたま悪いんだけど、さ」

扉を開けた先に居たのはスコープを覗いて軽食を取る男。その後ろに二発9パラをお見舞いして終わり。
なぁんで鍵をかけてなかったんですかね。まぁ一般人こないし、来るとしてもお仲間だけだろうし、油断してたんだろうが。残念だったね、隙を見せたら終わりなのさ、この世界。

「さぁてと。情報得ないとね」

ターゲットは誰だか分かってる。問題は人数だ。
緑が詳しく言わないのはいつものこと。“いつ、どこで、誰が”聴いているか分からない世界だ。故に暗号のような単語で会話する羽目になるんだが。
やっすい中華フォンを見る限りだと連絡を取っているのは二人と見た。GSPの位置は中央公園に一人と学校付近に一人。
ここまで来たら警備服に用はなし。ぱっぱっと脱いでいつもの服装へ。


「一先ず中央公園から行きますか」

*****

クーラーがガンガンにきいたマシン室。みんな寒いと言うけれど自分にとってはオアシスなわけで。

「チョリーッス。暇なんだけどー」

そういって外で遊んできたであろう黒ちゃんは事務所に帰ってきた。寒ッ!と言いながら煙草に火をつけている。
ファンが吸い込んじゃうからやめてほしい。…いや自分も吸いますけど。

「青ちゃんが仕事してるよ。まぁた先生狙われてる」
「おっ、楽しそうじゃん。混ぜてよ」
「つーても昼間からの動きとなるとたぶん少数だから青ちゃん一人で十分だよ」

ちぇっ、とつまんなさそうに黒ちゃんはお気に入りのピース缶を吸っている。

「んで、先生次はどこの誰に狙われてるの?」
「ざっと調べた感じだと、半年前にうちが葬った893の事務所があったじゃん。三次団体の、枝葉のやつ」
「なんか、そんなのもあった気がする」
「まぁ枝葉の団体だし記憶曖昧だよね。んでまぁ、そこの生き残り、というより〇〇事務所の上が仕返しに先生狙ってるみたい。当てつけだね」

枝葉の上納金なんて大したことないだろうに、それとも可愛がってた子分でもいたのだろうか?
今となっては真相は不明なのでなんとも言えないけど、こっちの二次団体事務所についてはあとで総括に内緒で始末するかお灸据えないといけない。面倒だな~もみ消すの。

「おっ、そっちは食ってもいいのか?」
「ドーゾ、お好きに。とはいっても向こうの出方次第かな。まだ噛みついてくるようなら迎撃準備はするし、大人しく引くようなら此処で終わり」

噛みついてきてほしいね~、なんてのん気なことを言いながらP缶二本目を決める黒ちゃんを横目に自分もマールボロのメンソールを指に挟む。

「マッチってコスパ悪くない?」
「いいじゃん、好きなんだから」
「マッチの火を消した後のにおいが、でしょ?」

まぁ、お手製の爆弾作るの好きなので、火薬はとりわけ好きですよ。

*****

自転車回収は最後にするとして、中央公園の、見るからに似つかわしくない奴。例えばタトゥーがキツい人、とか。
ナイアガラの滝を迂回して上へ回る。滝の前は人が多すぎて目立つから、待機するなら丁度木漏れ日にもなってる上の方かな、と。

「ハロー。ちょっといいですかね」

ちょっとといいつつ、掌底打ちを顔面に決める。もってる中華フォンが同じつーことは、たぶん直感そうかな、と。
それにGPSの位置に多少誤差はあるものの、だいたいは合っているし。

「あのさぁ、どこの者だかは…いちおう聞いてみても良い?」

と、問いかけつつも相手は悶えているので返答は難しそうだ。
時間もないのでちゃっちゃっと済ませたいオレは、頸椎を踏んでそれで終いにすることにした。あともう一件あるんだよね。
次は学校の近くだから急がなければマズイ。
とりあえず遺体は茂みに投げておいて、回収班が来るまで見つからないだろう。今日は平日で人も少ないしな。夕方までなら大丈夫。

ロードバイクを駐輪場から出して、その足で西新宿にある最大のマンモス学園に向かう。
小中高校一貫のどでかい学園だ。ハイテク施設もさることながら、温室や教会まで完備している謎仕様。
たぶん待機しているのは学校回りで、路駐だろう。
車もベターに国内高級車だといいんだが…。などと考えていたら早速似つかわしくない車を見つけた。なんでこう、ベッタベタのベンツとか乗っちゃうかな。
一先ず学園周辺をぐるっと一周して校内を遠目に確認してみる。静まっているのでまだ授業中のようだ。

そして後方からさりげなぁく近づいて、後部座席の窓をノックする。

「excuse me?excuse me?」

もちろん、気付いてくれるまでしつこく叩きますよ。ここで最期なのでかなり余裕かましてるっていうのあるが、まぁなんだ、殺しってのはやっぱ“楽しまなきゃ損”なのでね。

「なんだ、お前は。何か用か」
「ちょっとお話したいんですけど、時間ありますかね…?」
「…司令塔を殺ったのは貴様だな」
「おや、お話が早い。んで、あんたらどこの誰?」

一服したいところではあるが我慢我慢。
ツーブロックの黒髪男はため息を吐きながらもう少しだけ後部の窓を下げてきた。

「あんたの会社は覚えちゃいないだろうが。半年前だ、枝葉の組事務所を潰したの覚えてるか?」
「覚えてますよー。あまりにもちゃちかったんで、あっけなくてガッカリだったぜ」

ナイフにするか、銃にするか。相手は二人、先にやるなら運転手…。
抜いたのは僅かにオレの方が早く、間髪せずに運転席に二発。屈んで銃先だけを車体にねじ込んで三発。9パラでベンツの車体を撃ち抜くにはちと辛い。
見えはしないが7割がた当たっただろう。

「なんかデカいヤマでもあったんですかねぇ。遺言がてら教えてよ」

胸に二発、首に一発。我ながらいい位置だ。素晴らしい。

「あそこは、枝葉、と、みせかけ、て…。洗濯屋だった、んだ」
「それだけ聞ければ順分だ。どうりで“狙いに来たわけね”」

持ってあと10分ってところか。ほっときゃ死ぬし、それでいいだろう。
一先ず連絡連絡、ガラケーを取り出しながら移動する。電話先はもちろん緑だ。西新宿の本社ビルに帰るとしよう。

『あいあいよー、GPS拾ってるんで遺体回収はOKですよ。なんか進展あります?』
「火元はどこだか分かってるか?」
『半年前に枝葉の三次団体の事務所を潰してほしいって依頼あったじゃん?そこの上の事務所が出火元』
「そこの枝葉、洗濯屋だったらしいぞ」
『あらやだ!じゃあもう出火元消化しに行かなきゃダメじゃないですかヤダー!』

後ろの方でもう一人声がする。ジィさんではない、さしづめ黒だろう。ここのところ、大きいドンパチなかったしな。

「このままサクッと消しに行くぞ。オレの分も支度して待っててよ」
『了解ッ!いや~そこそこ骨があるといいんだけどね。なんじゃワレェッ!は勘弁してほしいぜ』
「オレたちがやるのはカチコミじゃなくて暗殺だ。銃口が向けられてるのも知らずに消してやろうな」

*****

今日はー、まぁ、特段用事もないんだけど。昼にKKから連絡が来るのは珍しいというか。
なんていうか、向こうは律儀なので俺の仕事中とかに連絡してくるっていうのはよっぽどのことがない限りありえないんだけど、でもメール確認すると「19時に西新宿の△△で席とったので中央口で」とのこと。
平日の真ん中なんだけどな~、お酒は強い方だと自負しているが、でも万が一明日に響かないともいえないので、そういうリスクはあんまり好きではない。

「よっ、先生。お待たせ」
「あんまり待ってないよ。△△ってどういうお店?」
「鉄板でステーキ焼いてくれる店だよ。もちろん飲みホだ」
「それは嬉しいんだけどね。明日もまだ学校あるから、ほどほどにしておくよ」

それじゃぁ行こうぜ、とKKは歩いて行ってしまう。まぁ、でも、こういう時っていうのはさ。俺も分かってはいるので、

「歩きながらの方が良い?」
「おっ、察したか。歩いてる方が都合がいいぜ。聞き耳立てられないからな」
「なんかあったの?」
「いやなに、ちょっと怖いお兄ちゃんと火薬と硝煙のお部屋で楽しくやってただけさ」
「…いや、まぁ、その。昼間から大変だな」
「なぁに。根元から潰してやったさ。つーてもクソザコナメクジ事務所だから怖がることはねぇぜ。お粉をメインにしてるところじゃなかったんでね」
「ん~、それはちょっといい話かも」
「つーても今回の件はちぃっとばっかしアレなんでね。また暇なときにでも家で話してやるよ。面白いからな」

いやいや、面白いのはKKくんだけであって俺は微塵も楽しくないよ???
胃が縮まっちゃう。お腹空いてるのに。

「でも平日なのに俺と一緒いるって状況を選択したの、少なくとも俺が関わってるからでしょ」
「ご明察。でもその話はまた今度。別段危害が加わる事は100%ないから、念のためガードマンやってるってだけさ」

だといいんだけども。どこまで突っ込んでいいのか分からんので、やめておこう。